昭和60年に刊行された『金銭通は人間通』で
邱が捉えたのは「成熟社会」の到来です。

日本の産業界に国際競争力がついたということは、
生産設備が整い、需要さえあればいくらでも
供給のできる体制になったということである。

こういう状態を成熟社会になったと呼んでいるが、
成熟とは
物質的に飽和した状態にほかならないから、
供給力はあっても需要はそんなに伸びない。

というより物はいくらでもできるが、
さっぱり売れない状態が続くから、
少なくともじゅうぶんな設備を持った
既存の産業界は、僅かの例外を除いて、
全体として万年不況におちいる。」

こういう状況のなかで、邱は
「小さな商売に従事する人に残された
ほとんど唯一の成長産業は恐らく
食品及び飲食の分野であろう」と述べています。

食品業もレストラン業も、
小さな規模からスタートできる商売だが、
「世の中が贅沢になって、いっそう個性の
追求が行われるようになると、小さくとも
個性の強い企業が繁盛する可能性が出てくる」
というのが邱の予見の根拠です。