『邱永漢の株入門』の「まえがき」を続けます。
邱が株式市場の中心を「成長株」から
「国際銘柄」へと大きく変えていることがわかります。

「しかし、そうは言っても、
約4半世紀続いた高度成長に終わりが来て、
低成長の時代になり、
更に社会の『成熟化』と、『老齢化』と、
全世界が日本の輝かしい成果に注目する
いわゆる『国際化』が現実のものとなると、
投資の環境は180度といってもよいほど大きく転換した。

たとえば、私が株式投資をはじめた当時は、
経済成長のただ中にあったから、
私は『成長株理論』というのを考え出し、
株は相場をとるよりも、
成長力の高い株を買ってジッと持っている方が儲かりますよ、
としきりに長期投資をすすめた。
この時代には小型で成長力が高く
毎年のように増資をくりかえす株が人気の中心であった。
ところが、成長経済時代が終って、
世界的に景気が低迷するようになると、
少しでも成長力のある国の経済に投資しようという動きが
強くなったので、相場を動かすファクターも変わったし、
投資の対象とされる銘柄も一変した。

長い間、いわゆる大型株は
『成長のとまってしまった株』として放逐されてきたが、
国際化時代になると、外国人でも知ってるような
世界的に著名な株でないとわかってもらえないし、
また同じ低成長の中にあってみれば、
大企業の方が安心感を誘うということもあって、
いわゆる『国際銘柄』の躍動ぶりが目につくようになった。

もし私が自分の古い考え方にずっと固執していたら、
時代の変化から取り残され、
『老兵は消え去るのみ』を地で行くことになったであろう。
株式投資にとって大切なことは、
『固定観念にとらわれないこと』であり、
我々の既成概念を裏切るような現象が起こったら、
それに対して拒否反応を示さないで、
それを新しい現象かもしれないと考えて、
検討の対象としてとりあげる必要があるのではないかと思う。」
『邱永漢の株入門』の「まえがき」)