Qブックスの一冊として昭和58年に
『事業家・資産家のための節税の実際』(最新版)を
再版しました。
昭和44年に出版して以来、版を重ねること13回、
昭和49年に改訂版を出して8回版を重ねた作品です。

「この本については思い出が多い。
まず本の題を決める時に私が『節税の実際』にしようと言ったら、
出版を引き受けてくれた日本実業出版社の方で
『対象をはっきりさせておく必要があると思いますから、
事業家・資産家のための節税の実際にしたいのですが、
いかがでしょうか』という意見が出た。

よろしいでしょうと、と私が賛成したら、
こんどはサブタイトルが欲しいとおっしゃる。
『じゃあ、年収500万円以上の人必読の書としたらどうですか』
と提案したら、『年収500万円以上では
あまりに読者がしぼられてしまいますから、
年収200万円に負けていただけませんか』
と値切られた。

この本、本当は高級所得者ほど身にしみて役に立つ本で、
200万円ちょっぴりの所得者ではたいして実感がない。
しかし200万円しかない人でもやがて500万円以上の所得に
増えることでもあるのだから、将来に備えて
節税の本を読んでおくことは決して無駄なことではない。
積極的に反対する理由もないので、
私が笑いながら同意を示したら、
年収200万円以上の人有用の本というサブタイトルがついた。
必読の書が有用の本に変ったのである。

私の友人がオフィス街の書店に立ち寄った時に、
『本当にあの本売れているのですか』
と書店のオヤジさんにきいたら、
『よく出ますなあ』、『どんな人が買っていくのですか』
と友人がききなおしたら、
『若い人や女の人もいて、どう見ても
年収200万円ありそうにない人が多いですよ』
という返事が返ってきたので大笑いになってしまった。
大方、社長のお使いで書店に来たのであろう。
でなければ、そのうちに自分も高額所得者になる見込みだから、
まだ儲かっていないけれども節税を今のうちから
勉強しておこうというケナゲな心掛けからであろう。
それだけ用意がよければ高額所得者になることまず間違いなし、
と太鼓判を押しておくことにしよう。」
(Qブックス版『事業家・資産家のための節税の実際』まえがき)