『固定観念を脱する法』が
出版されたのは昭和57年のことですが

その16年後の平成10年に
ベスト・シリーズ49として再版されました。

再版にあたって、邱が「まえがき」を読むと
その間における
世界の経済の動きや
邱の着眼の変化がよくわかります。

「『固定観念を脱する法』は1982年の春、
日本経済新聞社から

私の全集Qブックス全25巻を刊行するにあたって、
本来、単行本として出版すべきものを、
その第1巻として世に出したものであった。

学問をやる人でも、事業をやる人でも、また株式投資をやる人でも、
最大の敵は商売ガタキではなくて、過去の経験によって
自分の頭の中にしっかり根をおろしてしまった固定観念である。

そういう固定観念にとらわれないようにするためには
どうすればよいかということは私が人に教えることであるよりも、
私自身が勉強しなければならないことである。
従ってこの本を書いたあとも、
如何にして固定観念にとらわれないで生きるかが
人生を生きる上での私の最大のテーマであり続けた。

いまこの本を読みなおして見ると、
固定観念にとらわれまいという態度では
少しの変わりもないけれども、
15、6年前に考えていたことはズバリ当たったこともあれば、
全くピントはずれに終ってしまったこともある。

たとえば、国際収支が大幅黒字になりはじめた日本は
最大の輸出先であるアメリカに投資を集中するだろうと
私は予想し、事実、そういう一時もあったが、
対米投資は自動車とか半導体のような生産投資を除くと
不動産や債権の分野でも予想を上廻るドル安に見舞われて
大へんな被害を被り、少なくとも第一回目は、
完全な失敗に終ってしまった。

私はすぐ方向転換して、アジアの時代の到来を予想し、
アジアに目を向けるようにすすめたが、そこに至るまでに
タイから始まったアジアの通貨不安という嶮しい谷を
乗り越えなければならないピンチのさなかにおかれている。
変化は次から次へとおこってくるので、過去の考えに
固執していたのでは一歩も先に進めなくなっている。
その点、固定観念を持っていなければ、臨機応変に対処
することができる。だから将来のことを考えるときは
間違っても『昔はこうだった』と言わないことだ」
(ベスト・シリーズ版『固定観念を脱する法』まえがき)