皆さま、明けましておめでとうございます。
新年を機に、しばらく休眠していた「邱永漢伝」、
再開します。ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
台湾で作った証券会社の立て直しです。

「 おかげでいくらか名誉を恢復することができたが、
この六、七年の経験で、
株式に対する常識を全く持たない監督官庁の下で、
証券投資公司をやっても
先行き見込みがないと思うようになっていた。

会社を設立した七年前には、
資本金に集めた一億元で
台北市のド真ん中に敷地三百坪、
十階建てのビルを一軒建てることができた。

七年たった今日、
証券会社の資本金は依然として一億元余りしかないのに、
もはやそのお金でビルの一階分しか買うことができないのである。

こんなきびしい制約の下では、
大した含み資産をつくることもできず、
利益があがれば、その度に
裸同然になるまで配当をさせられる。

会社陣容は一応整ったけれども、
会社の将来を思うと暗然たる気分にとざされた。

台湾の法律によると、
証券投資公司は配当金をもらっても
値上がりによってキャピタル・ゲインを得ても、
三五%の税金をとられる。

それが個人の場合は、
配当金だけが総合所得税の対象になるだけであるから、
私のような純粋に投資だけを目的とした者にとっては、
わざわざ会社をつくるほどのことはない。

証券投資公司が本当に威力を発揮するのは、
上場企業の買い占めをやる場合で、
董事長としての地位を維持するためには
過半数の株主の支持が必要であるが、
そうした持株会社としての役割なら
充分にはたしてくれるのである。」
(邱永漢著『失敗の中にノウハウあり』)