昭和45年8月5日、
邱永漢は「お金の値打ちー
永久インフレ時代の利殖学」
という本を徳間書店から刊行しました。

まえがきで邱は。
「この本のタイトルを決めるにあたって、
私はよほど、
『利殖の道はインフレの巨像に乗って』としようかと思った」
と書いています。
邱には当時の時代傾向が
インフレに向かって
走りだしているように
見えたのでしょう。

 

この本は三部編成になっていて、
第1部は

「永久インフレを乗り切る方―お金の値打ちがへっていく」で
「インフレは抑えきれない」「株にインフレへの抵抗力なし」
「借金して不動産を買え」「自分への投資が最有利」
とインフレに抗して生きていくための提言が盛られています。

 

第2部は「これからの不動産投資
―財産としての家の買い方、つくり方」です。
邱は香港から日本に来たとき、
世田谷区の九品仏で借家住まいをし、
多摩川べりに家を買って移ったあと、
池上線石川台の大きな家に移り住み、
6年半住んだ後で昭和44年に
南平台の隣の青葉台に家を建てました。

この作品は「家を建てたり、建て直したり、
家具を入れたり、入れなおしたりということをくりかえしてきた。
だから、私が払って身をもって体験したことが、
これから家を建てようという人の役に立つかも知れないと思って」
(『お金の値打ち』まえがき)日本経済新聞に連載したものです。

 

第3部はサンケイ新聞に3年前の昭和2年
に書いた「年をとらない法」で

「人生後半のための経済設計―40歳からの生き方、考え方」と
題して掲載しています。

 

ちなみに、邱は5年後に出版した
『新お金の値打ち』で

「『お金の値打ち』は昭和45年に初版を出し、
3年間で10万部あまり売った。
インフレを一時的な現象と見ず、
当今の経済に必然的な社会制度として受け入れ、
その対策を考えたのがご時世にぴったりだったのである」
と書いています。