Qブックス版『事業家・資産家のための節税の実際』での
「まえがき」の引用を続けます。

「この本が出版されてからしばらく私は
“税法の権威”みたいな扱いを受けたが、
あるとき、広島に講演に出かけたら、
講演会場に主催者の取引先である地方の社長が見えて、
どうしてもご馳走したいとおっしゃる。
いや、講演が終ったら、夕方の飛行機で東京へ帰るんですと
謝辞したら、飛行機の出発時間まで一時間余りあるから、
せめてその間だけでもおつきあい願えませんかと粘る。

それほどおっしゃるならと指定された料理屋へ出かけたら、
盛大なご馳走が出てきて、社長は私に、
『センセイの本のおかげで、700万円税金が
税務署から還付されてきました。
今日はそのお礼の意味もあるんです』
と丁重な挨拶をする。
『へえ、それはまたどうしてですか』
と私の方がびっくりしていると、
『センセイのご本に新知己貸家住宅の特別償却のことが
詳しく書いてございましたでしょう。
あれを見て、私が貸しアパートを4軒ほど建てたのですよ。
そうしたら特別償却が認められて、収めすぎだからといって
税務署から700万円のお金が戻ってきたのです」
何でもないことだけれども、高額所得者が税法について
知識をもっているか、もっていないかによって、
これだけのひらきがでてくることもあるのである。

またご婦人のなかに、熱心に私のこの節税の本を
愛読してくれた人もいたことも事実である。
私のところへ自分の財産の運用について相談に見えた奥さんが、
『税金の本なんてむずかしくて読んでいると眠たくなるのに、
センセイのご本は目がさえてきますね。
私は夜が明けるまでかかって読んでしまいましたよ』
と目をこすりながら言うから、
『それは、きっと、奥さんが人一倍欲張りだからですよ』
と私は茶化したが、この本をめぐる挿話は
まだまだたくさんある。」
(Qブックス版『事業家・資産家のための節税の実際』まえがき)