『話の特集』の再建で、
世話になる人たちを招いての
様子を
伝える『邱飯店のメニュー』での記述の続きです。

「というのは、全部で十二皿出た料理の中に、
生菜包という料理を出した。
生菜包の生菜とはレタスのことであって、
レタスのなかに鳩の肉かウズラの肉と
ビーフンの揚げたものを包んで食べるのである。
日本では鳩もウズラもあまり馴染まないから、
鶏のテバ肉、ササミ、レバー、
それに豚のもも肉を代用してもさしつかえない。
作り方としては、テバ肉二百グラム、
ササミ二百グラム、豚もも肉二百グラム、
筍二個、クワイ五、六個を、すべてみじん切りにする。
干椎茸は水で戻してから、鶏レバーは茄でてから、
これまたみじん切りにする。
鍋に油大さじ三杯を入れてから、
葱のみじん切りと生薑一片を炒め、
香りが出たら、テバ肉、ササミ、豚肉を入れて、
水気がなくなってポロポロするまで炒める。
これにレバーと筍と椎茸も加えて、
さらに炒め、醤油、塩、砂糖少々、胡麻油、胡椒で味をつける。

つぎに天ぷら油を中火にして、
ビーフンを乾いたまま入れて焦げない程度に揚げ、
細かく潰す。皿の真中に炒めた具をおき、
まわりをビーフンでかこんで出す。
別に一枚一枚はがしたレタスを皿にのせて出し、
ケチャップと醤油と辣椒醤をまぜたソースを添えて出す。
食べるときは、レタスの中に鶏肉と揚げたビーフンを包み、
辛いのが好きな人はソースを加えて口へ運ぶのである。
肉の味よりも揚げビーフンの歯ざわりがよくて、
しかも芳ばしいので、サラダを食べるよりはずっと美味しい。」
(出典:邱永漢著『邱飯店のメニュー』)