文藝春秋社の池島信平さんは
専務取締役になっていました。

「頭髪が次第に淋しくなることについては、
池島さんも私も同じ立場であったが、
もうその頃には池島さんは頭上に
タダの一本もないようになっていたのに対し、
私はまったく絶望的というところまではいっていなかった」
(同上)

邱はこのクスリの事業化に
手を貸すところまで進んでいきますが
「私の旺盛な研究心も池島さんには
甲斐なき羽摶きと映ったらしく、
『邱さんほどの合理主義者が、
頭に毛を生やそうと考えるんだからな、
ハゲた頭に毛が生えるわけはないよ』と
私の知っている限りの人に、
一人残らず同じことをくりかえし、
喋ったそうである」
(同上)