経済の専門家といわれている人の助言に耳を傾けても、
うまくいかなかったので、株を買ったり売ったりする基準は
自分で見つけるよりほかないと邱永漢は考えました。

「そこで私は自分で実戦に従事しながらも、
株式投資の本などを少しずつ読み漁るようになり、
アメリカに『ボックスの理論』とか『ドル平均法』
だとかいった株式投資の理論があることも
知るようになった。」
(「損をしないで株とつきあう法」、
『若気の至りも四十迄』中央公論社に収録)

「たまたまそうした時期に、
ある日、行きつけの株屋の店先で、
桑田勇三という人の編集した『店頭株五ヶ年投資の実例』
という小冊子を手渡された。

パラパラと何気なくめくった私はたちまちその内容に
釘づけにされてしまった。その小冊子の中に、
12ほどの店頭銘柄の増資のスピードと
時価が統計になって出ていた」(同上)のです。

桑田さんはその小冊子で
「資金60万円を投じて店頭株の中から
12銘柄を選び出して各500株ずつ買い、
4年9ヶ月のあいだ、配当金75万円のほか約75万円を
増資払い込みに当てていただけで、
つまり元金60万円プラス75万円で、
4年9ヶ月後の持株総評価額が1400万円になっている」
(『私の金儲け自伝』)ことを明らかにしていたのです。

「私は、これを見てびっくり仰天するくらい衝撃を受けました。
というより、いままでの株の考え方を180度変えるような
株への"開眼"をこの手帳から得たといってもいいでしょう。
つまり、株を買うのだったら、誰もが知っている株を、
いくら値上がりするだろうとなどといって買っているより、
どういう会社が、将来、日本の産業界のリーダーの役割を
担うようになるか、それを見通すことのほうが
はるかに大事ではないかと、考え改めたのです」(『株の原則』)

こうした一連の動きののち、邱は
「どんな未来の横綱も必ず幕下から出てくるのだから、
店頭株の中から未来の花形株が出てくることはまず間違いない。
要はどれが成長株であるか、間違えずに探し出すことだけである」
(『私の金儲け自伝』)
未来の花形株になりそうな株を
探し出すことに精をだすことにしました。