邱永漢が
昭和31年(1956年)、文藝春秋誌に書いた
「日本天国論」の内容を
その33年後の1989年『付加価値論』Part1
でふりかえっている内容の抜粋の続きです。
「兎に角、所謂平和論者が存在している限り、
彼等が日本をアメリカの植民地にすることから
防ぐだけの力があるかどうかは知らぬが、
日本がアメリカの植民地になっていない証拠にはなる。
植民地ならば、彼等がとっくの昔に姿を消していると、
かつて植民地に育った我々にははっきり断言出来るからである」
「つまり、私の言いたいのは、
日本が国際的には真中より少し右の方にいるらしいとしても、
東と西との中間にいて、
程よい勢力均衡を保っているということである。
獣と鳥の合戦以来、日本では蝙蝠は皆から爪はじきにされているが、
蝙蝠の"蝙"は幸福の"福"に通じ、
非常にめでたいものと中国では考えられている。
事実、蝙蝠には蝙蝠の生き方もあれば、
蝙蝠の幸福もある。殊に両軍が休戦状態にある時は、
どちらからも引張り凧で、
しかも、どちらにも頭をさげないで生きて行ける。
国際政治の現段階に於いては、
甚だ不本意であるとしても、つかず離れずということが
小国にとって自主性を保持する唯一の方法ではあるまいか」