最初の小説、「密入国者の手記」が
「大衆文芸」1月号に掲載されることを機に
邱炳南のペンネームが「邱永漢」と決まりました。
この筆名の意味するところを
昭和47年に刊行した『私の金儲け自伝』で
次のように書いています。
「永漢というペンネームを選んだのは、
漢という字から連想されるものがややヤクザっぽくて、
好漢、痴漢、悪漢、硬骨漢、変節漢・・・・・・
といった男臭さがあり、 名前だけ見ると、
縞の背広にハンティングをかぶり、
黒眼鏡にダンヒルのパイプでもくわえた姿を
連想してくれるんじゃないかと思ったからである。(中略)
私の姉などは、悪漢を連想するから
とさかんに反対したが、私は自分が東大を出て
日本銀行に就職して、末は日銀総裁か、
などという道を歩むように見られるよりも、
彼奴は食えないやつだが、かわいそうに
身を持ち崩して・・・・と思われるほうが
よいと思った。」(『私の金儲け自伝』。昭和47年)