昨年、読売新聞の「時代の証言者』欄に
邱 永漢さんがとり挙げられ、26回にわたって
連載されました。

ですが、邱 さんの波乱に満ちた人生を語るのに
26回では少なすぎると思った人が、
邱 さんに「先生の自伝を 書いてほしい」
と迫りました。

それに対する邱さんの対応は次のようなものでした。

「 私も新聞や雑誌に頼まれて
自分がやってきたことを書いたことがあります。

でも自分のことを書くのはそう簡単じゃありません。

うまくいったことを書くと、
『自慢たらしい』と言われるし、
上手くいかなかったことを書くと、
『あいつ失敗ばっかりしている奴じゃないか』

とバカにされます。ですから自分で書くより、

人に書いてもらう方がいいんじゃないでしょうか。
自惚れとカッケのない男はいないと
昔から言われていますが。」

 ということで、先生は前記の2冊の本を書かれましたが、
生涯を通しての自伝の執筆に取組まれることなく、
この世を去られました。