私の本棚には邱永漢著『中国人と日本人』が2冊あります。
『中国人と日本人』は1993年3月20日に初版が発行されました。

私が持っている1冊は1993年5月15日で第6版。
もう一冊は1993年12月10日で第17版。

前者の帯は本の目次の一部を伝えていますが、
後者の帯では、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、
京都新聞、週刊東洋経済の各誌の書評を伝えています。

この本が短い間にいかに多くの読者に
迎えられたかがわかります。

このことについて邱さんは
1993年9月の時点で、スポーツニッポン紙での
連載のなかで次のように書いています。

「先を見て先手を打つことは、
商売をやる人にとってどうしても
必要なことである。

私自身、40年も物書きをしてつとまってきたのは、
次にジャーナリズムが何に関心を持つかを読んで、
先手先手とそうした問題を取り上げてきたからである。

食べ物の話を書いたのも、
金儲けをテーマにしたのも、
また旅行や老齢化の本を書いたのも、
何年か先になると皆の関心が
そこに集まるであろうことを予見して、
その少し前から問題に取り組んできたからであった。

今度、ベスト・セラーになった
私の『中国人と日本人』にしても、
いよいよ日本人の中国と牛が始まることを予見し、
双方がうまく行くことを予見し、
双方がうまく行くためには、お互いの
正しい理解が不可欠だと思ったからである。

少し早ければ、誰もその必要を
感じてくれなかっただろうし、
少し遅れたら、そのスキを埋める人が次々と出て、
私の出る幕がなくなってしまったに違いない。

だから何事も『天時、地利、人和』というように
素敵なタイミングが必要なのである。」
(1994年『成熟ケチケチ社会』の
「先見性のある経営者を見よ」)