人物評論分野での最初の作品
『東洋の思想家たち』は
中国を代表する三大思想家
孔子、荘子、韓非子をとりあげた作品です。

昭和33年に講談社から刊行され、
昭和37年に富士書店から新書版で再販され、
また最初の全集「邱永漢自選集」No.5
として昭和47年に徳間書店から再販され、
二回目の全集、Q-booksの5として
昭和57年に再販され、さらに三回目の全集
「邱永漢ベスト・セラーズ」でも
平成9年に実業之日本社からも再販されました。

そして近くは「ハイハイQさんQさんデス」
で掲載されましたが、その際、
“著 者 か ら 一 言 ”として
邱さんが“掲載の弁”を書いておられます。

「『東洋の思想家たち』の初版は、
いまから49年前の昭和33年、
私が34才の時に講談社から出版されました。
最初、創元社から出版する予定で、
社長さんも承知していたのに、
最終的に断られたのは
同社の顧問をしていた小林秀雄さんに
反対されたからだとあとで知らされました。

孔子、荘子、韓非子といった
中国を代表する三大思想家を
30すぎの若造にいい加減に料理されてたまるか、
と頭から否定されたのも、
この齢になればわからないことではありません。

でも50年たっても、
これらの思想家に対する私の見方に
さしたる変化はありません。
私が早熟だったのか、それともあれっきり
成長がとまってしまったのか、
いま読んでも中国人の心を大きく支配している
不滅の思想をいまの人に
わかりやすく解説した積りです。

その後、新書、徳間書店、日本経済新聞、実業の日本社と
私の3回の全集にも収録されていますが、
絶版になって久しいのでご要望に応えてここでもう一度、
お目にかけることにしました。(邱 永漢)」

ちなみに私が最初に読んだのは
富士書店から発行された新書版で
神田の古本屋さんで見つけました。
以来、すべての版のものを読んでいますが、
この本に限らないですが、再販の都度
邱さんの“まえがき”が追加され
これが読者にはとても興味深いのです。

最近邱永漢ファンになった若い方も
この本を好んで読む人が多く、
この本はこれからも永遠に
読みつがれるだろうと私は考えています。