前回、檀一雄さんの『檀流クッキング』のなかで
邱永漢さんが檀さんに伝えた“台湾おでん”の
作り方を紹介しましたが、“台湾おでん”というのは
“東坡肉”(トーボーロ)と言われる料理だと思います。

この“東坡肉”の作り方については、
邱さんの『食は広州に在り』に次のように書かれています。

「世の中はおかしなもので、
蘇東坡の詩文についてはほとんど知らない人々でも
彼の号を冠した料理を通じて彼を記憶している。

いわゆる東坡肉(トーボーロ)は蘇東坡の創作ともいわれ、
彼の好物でもあったといわれるが、それが日本に伝わって
豚の角煮と呼ばれ、長崎料理では欠くべからざるとなっている。
長崎風の角煮の製法について私は良く知らないが、
ふつう、わが家で東坡肉と呼んでいる料理の作り方は
次のようなものである。

まずバラ肉百五十匁か二百匁を大きいまま煮湯の中を
くぐらせてから適当な大きさに切る。切ってから煮ないのは、
肉が収縮して不規則な形になってしまうからであって、
それに生薑(ナマショウガ)をたたいたものを加え、
醤油と少々の砂糖を入れて、約一時間半くらい煮る。

今度は肉の脂身のほうを外側にして器のほうにきれいに並べ、
生葱(ナマネギ)と煮汁を加え、約4時間ほど蒸篭で
気長に蒸す。肉がすっかりや柔らかくなってから、
余った煮汁にほんの少しカタクリ粉を混ぜあわせて
上からかけると、ドロドロした色合いのよい
東坡肉ができあがる。」(出典:『食は広州に在り』の「西園雅集」)

この記述の後にはバラ肉と白菜を組み合わせた
“東坡菜”(トンポーツァイ)という料理の作り方も
紹介されています。