1984年(昭和59年)に発刊された
『人の集まる所に金が集まる』の「まえがき」
の引用を続きを以下に続けます。

「読者もご体験のとおり、
商売はどこでもピンチで
経済活動に従事している人たちは皆、
“頭の切り替え”を迫られている。

私自身、口で喋ったり、本で書いたりするだけでなく、
何十もの事業を抱えているので、舵のとり方を
一つ間違えると、たちまち船がひっくりかえるような
目に合わされる。

さいわい、そういう立場におかれると、
均等して操縦するから、結果としては
荒波を乗り越えて行けるが、世相の変化と
世代の交替が同時に来ているので、
うっかりするとわけがわからなくなって、
波に呑まれてしまう。

不況だ、不況だというのに、
グリーン車で団体旅行をする人が増え、
新幹線の中はいつも一杯。
同年輩の友人が目を白黒させて、
『どういうこっちゃ?』
ときくから、『物の流れる時代から
人の動く時代に変わったのですよ』と
説明したら、『なるほど』と納得してくれた。

この本に『人の集まる所に金が集まる』という
題名をつける気になったのは、そういう体験を
しかたからである。」

この本が出た当時、「人の集まる所に金が集まる」
という言葉が人々の口の歯によくのぼり、
当時、私があるところで、初対面の人と
話し、邱永漢さんのことを話題に出したら、
「『人の集まる所に金が集まる』と言う本を
お書きになられた人ですね」ということになりました。
「お金が集まるのは人の集まる所だ」
ということが感じられるように
なっていたことと、“語呂がいい”
ことがあいまってのことだったと思っています。