それから百年ほどたって
ドイツからロンドンに亡命していたマルクスという人が、
当時、産業革命によって経済の急速に発展していたイギリスで、
いくら経済が発展しても、懐が豊かになるのは資本家ばかりで、
スラムに住む労働者たちが貧困にあえぎ、
飲んだくれているのを見て、『資本論』という本を書いた。

マルクスという人は、体質的にネチネチと粘っこい人で、
全く他人の意見に耳を傾けようとせず、
自分の学問的な敵に対してはいささかの妥協も見せなかったが、
それがのちにこの人の思想を受け継いだ人々にそのまま受け継がれた。

私が見ると、
マルクスの経済実社会の捉え方にはいささか無理があるが、
「資本家ばかり栄え、労働者が痛めつけられている」という指摘は
多くの人々の社会的正義感に訴えたので、世の中を大きく変えた。

世界中に多くの共産主義国家を誕生させるきっかけとなったし、
どうやら共産主義にならずにすんだ国々でも、
今日、経営者が労働者の福祉に神経を使わないですんでいる国は一つもない。
そういった意味では、マルクス経済学のはたした役割は、
富をもたらす物の考え方というよりは、
分配に対する働く者の要求を代表するものであり、
経済学的というよりは社会思想史的なものであろう。