昭和31年6月25日、

直木賞受賞作、小説『香港』が

近代生活社から刊行されました。

 

この本の帯には直木賞審査員の一人で

この作品を推した大仏次郎の次の言葉が

掲載されました。

 

「私は『香港』を平易に書いてあるが

明るく面白いと思った。

第一、日本の小説にはない神経の太い人間

ばかり出て来るのが興味があった。

背景も生活も面白い。

日本の作家が書いたら線も細くなるだろうし、

困窮しても悠々としている人間の趣きに

誇張か破綻が現れそうである。

日本語で小説を書き出した此の中国人作家には、

島国の民、半島の人間が持たぬ

伸々とした素質があるように感じ、

向後の作品に期待したいと思った。」

 

またこの本には

華僑の故郷の家族の生活を書いた小説「石」

が併載されました。

 

この「石」は

「売猪仔といって豚のように自分の身を売って

海外に渡った華僑の故郷の家族の生活を書いたものである。

この小説に描いたような惨めな話は広東や福建の田舎に行けば

ゴロゴロしている。

のちにこの小説を自分で脚色し、

金曜ドラマで放映した」と

邱は『見えない国境線』(新潮社)で解説しました。