経済学部の学生ではありましたが
邱炳南(邱永漢)は法学部の講義を聴いたり、
また文学部の講義に出たりして、
戦時下にありながら、自由と反権力の気風を持つ
東大の雰囲気が気に入ります。
「私自身について言えば、
東大に入れてもらったおかげで、
日本の最高学府がどんなものであるかを実感するチャンスに恵まれた。
ザッと周囲を見まわしても、私より頭の回転がよくて、
私よりも機転がきいて、なおかつ私よりよく勉強する人は
あまり見当たらなかった。
のちに私が人物の評価をするにあたって
学歴をほとんど問題にしなくなったのは、
最高学府の楽屋裏をのぞいてしまったからである。
にもかかわらず、東大は日本にとって依然として最高学府であった。
あの軍国主義の嵐が吹きすさぶさなかにあっても、
東大の教授たちはガンとして考えを変えず、
東大は帝国主義と軍国主義に対する
レジスタンスの総本山という趣きがあった。
ここでは植民地出身の者でも、
教授たちからも同期生の誰からも
差別待遇をされることはなかった。
同期生の中には白系ロシア人が二人ほどいたが、
この人たちも異人種扱いを受けるよりは、
日本語がよくできますね、と逆に珍しがられ、
ちやほやされるほうであった。」
(『わが青春の台湾 わが青春の香港』)
邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。