「経済一等国 日本」(『香港の挑戦』昭和56年)で
紹介された日本人の特長の七つ目は
「日本的なコミュニケーションのよさ」
ということです。
「第七に、日本的なコミュニケーションのよさである。
戦後、マスコミという言葉がアメリカから輸入されて
日本に定着したので、マスコミという
アメリカ人の専門のように思いたくなるが、
アメリカは必ずしも意志伝達のよくできている国ではない。
なぜならば、アメリカのような各種各様の
人間の雑居しているところでは、
テレビとか新聞とか雑誌のような伝達手段を使って、
はっきりと物を言わなければ、
大統領の考え方すら皆の理解するところにならないからである。
ところが、日本人は単一民族という強みもあるが、
物を言わなくても、『以心伝心』といったところがあって、
社長の考えていることは直ちに重役会の知るところとなり、
重役会で決められたことは説明しなくとも
会社の総意になっていくのである。
これは逆にいえば、
末端の従業員の考え方が
係長から課長、課長から部長と、
『以心伝心』で上達していくということでもあって、
アメリカのような一方交通ではない。
と言うのは多数決の論理ではなくて、
社内の総意で物をきめるというしきたりに
なっているので、下がきめたことを追認するために
ハンコが押されるのであって、或る日、
突然、上からとっぴょうしもないことを
命令されてやるわけではないのである。」
以上が日本人社会における七つ目の特長で、
これで一連の指摘は終わりです。
邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。