2回にわたって、日本が高い成長を続けていた時期、
その日本の成長に着目した欧米人たちのいくつかの
著作を紹介してきましたが、そうした動きを受けて、
邱永漢さんが昭和63年2月に世に出した著作が
『金持ちニッポン論』です。
邱さんのメッセージを拝見しましょう。

「日本人は40年前、
敗戦の灰燼の中から再出発して、
たちまち世界一の金持ち国にのしあがった。

資源も資本もなかった国で
9千万人の過剰人口を抱え、途方にくれていたのが、
今では一億二千万人の人口を擁し、
それでもなお労働力が不足する
経済大国になったのだから、
世界中の人々が目を見張るのも無理はない。

日本企業の国際競争力が際立ってくると、
日本及び日本人について論ずる欧米人の
論客もふえてきた。
なかにはアメリカでベスト・セラーズになっただけでなく、
日本人にも広く読まれるようになったものもたくさんある。

日本人は外国人の目にどう映っているかに
ひどく興味を持っているので、『日本人論』は
いつの時代もホットなテーマなのである。

しかし、日本とさしてゆかりのない外国人で、
わけても日本に住んだことのない欧米人で、
しかも、日本語を喋れない学者の書いた本は
自分たちの生活環境とそれに基づいた発想で
日本及び日本人に物差しを当てるので、
間尺に合わないところが出てくる。

私が見ていても、ピントはずれだな、
ということがしばしばあるくらいだから、
恐らく首を傾げたくなるような事実に
たくさんぶつかているに違いない。
そういう意味では、日本に駐在している外国人とか、
日本人と交渉する立場にいる外国人にとっては、
日本人はかなり不可解な国民に映るかもしれない。

しかし、それは外国人にだけわからならいわけではなく、
ひょっとしたら日本人自身にもわからないことである。
と言うのは日本人のようにどっぷりその中に
浸っていると、それがごく自然なことであり、
他の国の人々や他の国の文化とどう違うか、
区別がつかなくなるからである」
(昭和63年『金持ちニッポン論』)

この続きは次回に紹介します。