「事実は小説より奇なり」という言葉があります。
この世には、小説などのつくり話などより、
ずっと不思議で、考えられないようなこと起こる
という意味のことを伝える言葉だと理解しています。

邱永漢さんが昭和49年の時点で、
自身の台湾での事業体験にもとづいて発刊した
初の海外投資の指南書、『邱永漢の海外投資の実際』
(のち『国際感覚をみがく法』に改題)には邱さんが
実際に体験されたことが書かれていて、33年たったいま
読んでも、興味がつきないところがあります。
この本を出した33年前の邱さんの言葉を
抜粋させていただきます。

「この本に述べられている内容は、
二年来の海外投資の体験から実際に得られたものである。

台湾と韓国はかって日本の植民地であり、
いい意味でも悪い意味でも、深い関係を持っている。
どちらへ行っても、中年以上の人たちだと
中年以上の人たちだと日本語が通ずるから、
語学の苦手な日本人にとっては、あまり外国へ
行ったと言う感じがしない。
その代わり旧植民地時代の古傷もまだ残っている。

しかもこの2,3年来、
中華民国とは国境断絶があったり、
韓国とは朴大統領暗殺未遂事件があったりして、
険悪な空気が流れているから、
海外進出の意志を持っていても、
企業の経営者たちはどうしてよいかわからずに戸惑っている。

私はこうした人たちに対しても、もし海外進出を
したかったら、どういう考え方にもとづいて
行動すればよいか、また世界中どんな遠いところでも
行けそうに思えても、結局、日本人が次の工業生産の
基礎として使えるのは、この二つの国だけだということを
知ってもらいたかったのである。

どうしてかというと、
工業が発達するための基礎条件、
たとえば、教育の水準とか、労働意欲とか、
効率や品質の概念とか、電力や道路や港湾の
公共設備とかいったものは、
一日にできるものではないからである。

東南アジアの他の国々が台湾や韓国の工業水準に
達するまで、恐らくまだかれこれ十年はかかるであろう。
しかし、台湾と韓国が日本のライバルとして互角の
相撲がとれるようになるまでに十年という歳月は
要さないのである。

こうした意味でも日本人は海外投資について
真剣に考えなければならない時期にきている。
この本が少しでもそうした人々のお役に立てば
望外の幸せである。 

昭和49年11月吉日
台湾台湾県新市郷邱永漢工業区にて 邱永漢」
改めて読むと、ここでも邱さんが指摘したような
方向で、世の中が動いたことがわかります。