邱永漢さんが「実業家の伝記について」という解説文を
書いた『世界の人間像5』には、
カーネギー、ピューリツァー、渋沢栄一、村山龍平
という4人の実業家の伝記が掲載されています。
これらの4作品を受ける形で、邱さんが解説文を
書かれたわけですが、邱さんは次のように述べておられます。
「成功した実業家たちの成功にいたる過程を辿ると、
自分がえらんだ職業からそんなにかけ離れたところへ
スッ飛んでいないことである。

カーネギーは電報配達夫から鉄道主任に転じ、
橋梁屋にかわり、橋梁やレールの材料をつくる
鉄鋼業に転じて、世界屈指の大富豪になった。
ピューリツァーはアメリカにもぐりこんで、
最初は兵隊になったり、セントルイスで弁護士事務所で
使い走りをしたが、記者という天職をみつけると、
後はその道で生涯を通した。

渋沢栄一は実家から出発して、
事、志と反した幕末の役人となり、
ヨーロッパまで出かけていったりしたが、
その見聞が大いに役立って、維新政府をやめると、
あとは金融畑に根をおろして、日本における
殖産事業の手綱をとった。
村山龍平はこんいちでいう貿易商であって、
たまたまその時に意気投合した同業者の息子から
新聞経営の話をもちかけられ、
片手間に手を出したのが、ついに生涯の事業となった。

人間は一生の間にいろんな人に会い、
色んなチャンスにぶつかる。
成功者に共通したことは
そうしたチャンスに出会った時、
殆ど必ずのように好運を前髪でつまもうとして
いささかも躊躇していないことであろう。」

この世で何事か成し遂げたいと思っている
野心家にとって、とても示唆に富む
有益な言葉だと思います。