私が最近、手に入れた邱永漢さんの文章が
掲載されているもう一冊の本は昭和36年に
角川書店から刊行された『世界の人間像5』です。

この本にはカーネギー、ピューリツァー、渋沢栄一、
村山龍平という有名な実業家の伝記がまとめられ、
末尾に、邱さんが「実業家の伝記について」と題した
「解説文」が載せられています。
さて、カーネギー、ピューリツァー渋沢栄一、
村山龍平とはそれぞれどういう人なのでしょうか。
邱さんの解説文にふれる前にそれぞれの
プロフィールを紹介しておきまましょう。

カーネギー(1835~1919)は、スコットランドの
貧しい織物職人の子として生まれ、13歳の時、
一家とともに渡米。
木綿工場の糸巻き手、電報局のメッセンジャー、
鉄道会社で電気技手、鉄道会社で監督などを経験、
鉄道の通る木橋が焼けて、数日にわたり
鉄道が不通になるのを見て、これからは
鉄橋の時代だと確信し、鉄橋を造る会社を創設。

その後、最新式の製鉄工場を成功させ、
ほかの大製鉄工場の支配権をも獲得していき、
63歳の時にはアメリカの鉄鋼生産の約25%を
支配するようになり「鉄鋼王」と呼ばれるようになります。
が66歳のとき、実業界から退き、
「富は神より委託されたもの」との信念に基づき、
教育施設や平和機関の設立など
福祉事業にもてる資産を投じました。

つづいて、ピューリッツァー(1847~1911)は
ハンガリーのブタペスト近郊に生まれ、
南北戦争中のアメリカに渡り、21歳の時
セントルイスのドイツ語新聞社に入社。

31歳の時、夕刊紙の編集・経営にあたり、
民衆の味方として汚職、大企業の不正に対する
キャンペーンを繰り返し、新しいジャーナリズム手法を試みます。

そして、41歳の時、ニューヨークの新聞「ワールド」を買い取り、
巨大な部数と影響力をもつ新聞を作り上げ、
全米の新聞のあり方を大きく変えるきっかけをつくり。
56歳の時、新聞記者の質の向上を願い、コロンビア大学に
ジャーナリズム学部設立のため資金を寄贈し
のちにその一部によって「ピュリッツァー賞」が設立され、
毎年、ジャーナリズム・文学・ドラマ・音楽の4分野で、
すぐれた業績を挙げた人に贈られています。